COLUMN

心療内科 と ストレス

「ストレス社会」といわれ、現代の生活では ストレス は、切っても切りはなせないものとなっています。私たちの生活において、ストレスはどんな意味を持つのでしょうか。

ストレス とは

セリエらによると、生体における「ストレス」は、
・外界からの刺激=「ストレッサー」 
・刺激によって生じる生体の反応=「ストレス状態」

 に分けられます。
図で球はストレッサー(ストレスの球)、ゴムボールは私たちの心身を表しています。ストレス状態とは、様々なストレッサーが加わった場合に生じる生体内の歪みを指します。球がゴムボールにあたってへこんだ状態です。

通常は、この「ストレスの球でボールがへこむ」状態になっても、すぐに反応して、このへこんだ部分の修復が行われます。なので、私たちは一時的にはストレスによる影響を受けても、健康を維持することができます(図の斜め上矢印のルート)。元に戻す働きを支えるのは、「恒常性(ホメオスタシス)」と呼ばれる生理的な機能です。

健康の維持か疾病への移行か

ところが、この修復がうまくいかないと、へこんだままの状態になってしまうことがあります (図の斜め下矢印のルート) 。これがいろいろなストレス関連疾患の状態です。

では、どんな場合にへこんだままになってしまうのか。
主に3つくらいの場合が考えられます。

  1. ストレスがあまりに大きい場合(ライフイベントなど)
  2. 1つ1つは大きくないが継続的にかかり続ける場合(日常生活ストレスなど)
  3. ストレスからの回復力が小さい場合(レジリエンスの脆弱性など)

1. ストレスが大きい (図ではストレスの球が大きい場合):
災害やトラウマに至るような、大きなストレスにさらされた場合です。この場合は回復が遅れたり、困難になったりします。

2. ストレスは大きくないが継続的する (図では小さいストレスの球が数多く当たり続ける場合):
日常生活でのささいなストレスが、長期にわたって慢性的に継続するケースです。1つめと違って、ストレス負荷の自覚がないことも多く、その分対処が遅れたりして、徐々にボディブローがきいてくるように影響を受けてしまいます。

3. 回復力が弱い (図ではゴムボールの回復力が弱い場合):
ストレスが大きくもなく、継続的でなくても、回復力が弱いと病気になってしまうことがあります。同じストレスでも、回復して健康を維持できる人と、影響を受けて病気になってしまう人があるのは、この回復力の違いです。

ストレスは「人生のスパイス」

セリエによると「ストレスは人生のスパイス」とも言われます。

必ずしも「ストレス」=「悪いもの」ではないのです。
適度なスパイスは料理をよりよいものにしてくれるように、適度なストレスは、人生を味わい深いものにしてくれます。刺激のない環境では自殺率が高いというのもうなずけますね。

ストレスによって病気になってしまうか、ストレスを人生のスパイスとするか、それは料理人である私たちの腕にかかっています。上記の1. ~ 3. のどの場合かによって対処方法も変わります。
その特徴を踏まえ、適切に対処することが重要です。

(Kanbara K, Psychosomatic Labo, https://psychosom.net/column/stress, Aug. 2021)

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