COLUMN

心と身体をつなぐ< 自律神経 >

「こころとからだ」をつなぐルートの中で、比較的わかりやすく、心身医学的にも重要な< 自律神経 ><そのシステムである自律神経系>について、心身医学の立場から述べたいと思います。

心身相関のルート

  • 神経系
    自律神経系などの神経系によるルートです。
  • 内分泌系
    生体内の情報伝達系のうち,ホルモンを介して行われるシステムです。
  • 免疫系
    体内に入り込んだ異物などを排除する、生体の恒常性維持機構の一つです。
  • その他
    神経ペプチド、サイトカインネットワーク、腸内細菌など

自律神経系はこの中の、神経系のルートの一つです。

自律神経とは

自律神経の「自律」というのは、運動神経などのように意識的に働かせることができるものではなく、状態に応じて「自動的に」調節される神経系ということです。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」とがあります。

  • 交感神経は、身体を活動、緊張、攻撃などの方向に向かわせる神経で、手に汗を握ったようなときにより働いている神経です。
  • 副交感神経は、次の活動に備えて回復する方向に向かわせる神経で、身体を休息させ、内臓の働きを高めたりします。

心拍と自律神経機能

例えば、自律神経によって調節されるものの一つに心拍の速さがあります。

普通は1分間に約60-80回くらい心拍がありますが、運動をすると100-150回くらいに増えます。人前で緊張したりすると「ドキドキする」などと言いますが、そのようなときにも心拍数が安静時よりも上がっているのが普通です。

そのようなときには、「交感神経」の緊張が「副交感神経」の緊張を上回った状態にあります。ぐっすりと眠っているときには、逆に「副交感神経」が優位となり、最もゆっくりした心拍になっているでしょう。

運動すると「自動的に」心拍数が上がります。
「これから運動をするから心拍数を上げておこう」
などと、意識的に上げるものではないでしょう。

このように、自律神経は意識しなくても自動的に働いて、身体をより適切な状態に持っていこうとしてくれる、言わばありがたい神経なのです。

自律神経系の乱れ

本来はホメオスタシスを維持し、身体を適切な状態に保つシステムなのですが、その働きが乱れると、病態に関与することがあります。

例えばパニック発作では、この「自律神経の乱れ」がきっかけもなく急に生じ、不安とリンクして負のスパイラルに陥ってしまいます。

また、慢性疼痛では、交感神経の緊張が強くなり、筋肉の収縮や末梢血液循環の低下が起こり、それが痛みを増幅したり長引かせたりします。すると余計に交感神経の緊張が生じるという悪循環に陥ってしまいます。

自律神経は、前述のように意識的に調整できないので、このような悪循環に陥ってしまうと元に戻すことが難しくなります。

自律神経系の調整

そんな自律神経の働きを調整するにはさまざまな方法があります。

気功、ヨガ、アロマセラピー、マッサージ、鍼灸などの東洋医学的な方法、呼吸法や自律訓練法などの心身調整法、規則正しい生活などです。

中でも「バイオフィードバック」は、本来自動的に調整され意識していない自律神経の働きを「見える化」して意識とつなぎ、自律神経系の自己調整を試みるものです。

日内リズムを整える<朝日を浴びて昼はしっかり活動し、夜はゆっくり休む>
これだけでも効果があります。

また、呼吸は上記のさまざまな方法の鍵になるもので、深いゆっくりとした呼吸は交感神経と副交感神経をリズミカルに刺激して活性化する効果があります。

自分に合った方法で、本来の自律神経の働きやバランスを取り戻すことが重要です。

現代の社会生活と自律神経

本来心身を適切に保つはずの自律神経が、逆にさまざまな病態につながってしまう背景には、現代の高度に情報化された社会生活が影響しているとも考えられます。

もともと、日中は「闘うか逃げるか」で、交感神経が身体を活性化させ、夜にはゆっくりとリラックスして翌日の活動に備える、といった想定だったのです。しかし、現代の昼夜を問わない生活はそのような想定を超えてしまいました。夜遅くまで明かりやディスプレイに照らされ、オンとオフの境目がなくなり、交感神経と副交感神経の両者が複雑に活性化されて、適切に心身を調整することが困難になっているのです。

自然に近い環境に身をおくことでリフレッシュされるのは、このような背景もあると考えられます。