COLUMN

非感染性疾患 Non Communicable Disease (NCD)と 心身医学

「感染性疾患」vs「非感染性疾患」

歴史上、医学・医療における一大課題は感染症との闘いである。
ペスト、スペイン風邪(インフルエンザ)、重症急性呼吸器症候群(SARS), 中東呼吸器症候群(MARS), 新型コロナ感染症など、大きな脅威が周期的に訪れ、人類の営みを大きく揺るがす契機となってきた。今日ではいうまでもなく、新型コロナ感染症が大きな課題である。

感染症は、公衆衛生など社会的側面が大きくかかわる。新型コロナ感染症は、変異株などある意味大変狡猾というか、優秀なサバイバル術をもっているため、公衆衛生環境の整った先進国においても問題となっている。しかし、そこまで進化していない、従来型の感染症については、主に途上国で問題となってきた。もしくは、先進国では、高齢者施設などの一部の状況で問題となっている。

では、先進国における課題はというと、このいわば医学・医療の主流「感染性疾患」に対して、もう一つの流れである「非感染性疾患」がある。新型コロナ感染症の影に隠れてしまった感もあったが、大きな流れとしては歴然としている。

非感染性疾患は、国際的には
Non Communicable Disease (以下NCD)
と呼ばれている。NCDは、心疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病などの日本で言う「生活習慣病」が中心で、ストレス関連疾患もこれに含めることが多い。

非感染性疾患(NCD)の特徴

非感染性疾患(NCD)には、以下のような特徴があるとされる。

  • 感染性疾患では病原微生物という原因が明確なのに対して、NCDは生活習慣( ライフスタイル ) やストレスなど心理行動側面を含め、遺伝、生理、環境などの複合的要因による(Mendenhall, Kohrt, Norris, Ndetei, & Prabhakaran, 2017)。
  • 感染性疾患が比較的急性の経過をたどるのに対して、非感染性疾患は慢性の経過をたどる(つまり長いつきあいになる)。
  • 治療についても、薬は一時的で根本的な解決につながりにくい。
    食事、運動、喫煙など生活習慣の改善やストレス対処などが重要である。

このような特徴があるため、その対応は一筋縄ではいかない。

ライフスタイル 行動と心身医学

NCDは現代の高度の文明・情報化社会の発展、高齢化、複雑なストレス社会の進化などに伴って表面化してきたものであり、いわば「現代病」である。このような世界的な「感染性疾患」から「非感染性疾患」への潮流がベースになり、その中でも特に先進国などでは心理社会的因子の関与が大きい疾患の比重が増え、心と身体の両面をみる視点が重要になってきた。

生活習慣は習慣的・日常的な「行動」である。
繰り返される行動のパターン=「生活習慣」(ライフスタイル)である。
「行動」の背景には「心」がある。私達は心に思うことを行動に表す。タバコやお酒などもストレスへの心理的対処行動の一つである。

特に習慣化された行動は心理的要因の関与が大きい。心が整っていると規則正しい生活になるし、心が乱れると不規則な生活になってしまう。ダイエットの成否も私達の心次第である。「わかっちゃいるけどやめられない」といわれるように、行動のもとになっている心理を無視して、行動だけ変えるのは難しい。

このような中で、心身両面をバランスよく診て、それをとりまく様々な要因も含めた「関係性」をみながらアプローチしようとするのが心身医学であり心療内科である。一筋縄にはいかないNCDについても、その心理的側面との関係性をみることが、極めて重要な視点となる。

私の「行動」やその背景にある「心」を通して、自分自身と向き合うことが最も重要なのである。

(Psychosom.net, Oct 2022)