COLUMN

こころとからだ

心身医学 は こころとからだ の関係を重視した医学です。
この関係性を理解することは、心身医学の理解において大変重要です。

人の こころとからだ – David Bohm の譬え

人間には身体的側面(からだ)と、心理的側面(こころ)があることはいうまでもありません。
・身体(からだ)は、人の目に見える、物質的な側面であり、
・心(こころ)は目に見えない、非物質的な側面です。
人が心の中でどんなことを考えているか、誰にもわかりません。しかし、私達はその言動や身体の状態などを通して、その心をうかがい知ろうとしています。

人間はこの両者が一体となった存在であり、この身体(からだ)と心理(こころ)は分離できるものではありません。古来より「心身一如」とも言われます。

米国の物理学者で、哲学や心理学にも影響を及ぼしたDavid Bohmは、心と身体の関係を次のように譬えています1)

「透明な四壁で囲まれた水槽の中を、一匹の魚が遊泳してるとき、互いに直角になる2つの側面に映し出された魚の姿が心と身体であり、魚が人間の実体である。」

2つの壁に映った影は、一方が動けば他方も動く、互いに切っても切れない関係にあります。 心が緊張すると筋肉も緊張し、心が安らぐと身体もゆるみます。このように心が変化すると身体が変化し、身体が変化すると心も必ず変化します。

この譬えを通してBohmは、「身心は相互影響ではなく、むしろ一体となって総体を形成する」と述べています。

こころを扱うこととからだを扱うこと

医療・医学は身体的側面を扱うことが多く、心理学はその名の通り、心理的側面を扱います。例えば、薬によって身体の状態がよくなり、症状が軽減すると、心理的にも不安が減って楽になるでしょう。逆に、身体の状態が悪くなって痛みなどの症状が強くなれば、心理的な不安は強くなり、恐怖心を覚えたりするでしょう。これがさらなる症状の悪化を導くこともあります。

臨床心理学では、心理的支援によって心理面に介入しますが、心理的な不安が減って楽になれば、身体面でも心拍が緩やかになったり筋緊張が緩和するなどの変化が生じます。

このように、身体的に介入しても必ず心理的変化が生じるし、心理的に介入しても必ず身体的変化が生じます。言葉を変えれば、「身体を扱うということは心を扱うことになり、心を扱うということは身体を扱うことになる」のです。なので、心だけを扱うセラピストであっても、身体を扱うことになる、という視点を持ちながら行うことが重要です。

心身医学 でもこのような視点を大切にしながら、心と身体を分けないアプローチを目指します。薬を使うときでも「この薬には、〇〇の作用があります」と、その機序を説明することで、その効き方も変わってきます。このような面を治療的に扱うのです。

心と身体の一方のみを見ると、車の片輪だけを走らせるようなアプローチになりかねないので、両輪をバランスよく見る視点が重要です。

参考文献
  1. 河合隼雄「心理療法と身体」 岩波書店 2000