心身症などのストレス関連疾患の中には、心と身体 がばらばらで身体や感情への気づきに乏しいケースがあります。そんなケースでは、それらの対話と統合を目指すアプローチが有用です。
心と身体が解離?
心身症や機能的な身体疾患、ストレス関連疾患などの方で、こういうケースがあります。
- 感情はいろいろあるけれど、それがうまく表現できない。
- 身体の緊張が高いけど、それを感じることができない。
- 身体の症状が感情や情動と関連がありそうだけれど、その自覚がない。あるいは、認めたくない。
精神的・身体的なエネルギーはある程度高いのですが、そのエネルギーの向く方向がばらばらであったり、相互のコミュニケーションがうまくとれないために、心身の統合感がなく、いろいろな心身の不調が出るケースです。
アレキシサイミア (Alexithymia: 失感情症) や アレキシソミア (Alexisomia: 失体感症) とも重なる部分がありますが、特にエネルギーは高いのに統合されず、有効に使われないのが特徴的なケースです。心と身体 のエネルギーが有効に使われないため、うつというわけでもないのに疲労感が大きくなります。
このようなケースでは、ばらばらな状況に気づき、統合していくプロセスが必要です。
対話と統合のプロセス
一つの方法として、からだの感覚と「対話」をするところから入るやり方があります。からだの感じていることにまずはよく耳を傾けます(からだの声をきく)。
聞く耳を持つという姿勢がまずは大切です。「聞いてやるぞ」という態度ではなく、「よく耳を傾けてきく」という姿勢です。
そして、今度はからだに働きかけます。動かしてみるのもよいし、言葉で話しかけるのでもいい。「対話」は一方通行ではないので、やりとりを続けることが重要です。
そのような「対話」を続けていると、何らかの気づきが生じるはずです。それをきっかけとして、自分の中にある、感情、情動、知性、身体という要素が統合されて、有効に機能するようになっていきます。
脳科学的観点でいうと、脳の機能的レベルの間でコミュニケーションがうまくいってなかったのが、少しずつつながりがよくなり、統合されていくのです。
決して簡単なプロセスではありませんが、気づきが深まっていくと、少しずつ自然にすすんでいきます。
ちょうど、野球やサッカーで、チームワークがうまくいかなければどんな強い選手が集まっていても勝てないけれど、チームワークやコミュニケーションがうまくいくと、選手力の総和を最大限にすることができ、勝てるようなものです。
さまざまな心身医学的アプローチはそのようなプロセスを助けます。