心身医学 で重要な、心と身体の関係(心身相関)の機序を理解する上で、
脳 の「機能的レベル」を理解することが重要です。
脳 の3つの機能的レベル
脳の働きは広範ですが、心身相関の観点からは、機能的(階層的)レベルの視点が有用です。
脳にはは大きく3つの機能的レベルがあるとされます。
内側ほど発生学的に古く、かつ「身体」に直結しており、外側は発生学的に新しく、「心」の機能(高次精神機能)に関連します。その間に「心と身体の接点」となる「辺縁系」があります。
新皮質系
人間的な機能:適応、創造、判断など、意識に上る精神機能に関与するレベルです。人間はこのレベルの機能が非常に発達しているため、高度な精神機能を有します。
大脳辺縁系
動物的な機能:本能行動、自律神経・内分泌・免疫系などによる恒常性維持の調整、情動など、サバイバルや情動機能に関与するレベルです。
前述のように「心と身体の接点」であり、意識-無意識にまたがり、心身医学的に重要です。
脳幹・脊髄系
植物的な機能: 反射や、呼吸・循環など生命を維持するのに必須の機能に関与するレベルです。通常は意識に上らない無意識のレベルで、身体に直接つながっています。
「身体」から「心」へ
身体からみると、まず身体に直結しているのが、3番目の脳幹・脊髄系です。
このレベルは植物的に生命を維持する、生命維持装置のような働きを担い、通常は意識されることはありません。この部位が機能しないと生命を維持することはできません。木でいうと根っこや幹にあたる重要な部位にあたります。
その外側にあって、一番外側の新皮質系との間にはさまれているのが 、2番目の大脳辺縁系です。
発生学的には新皮質系に比べて古く、「情動」や動物的な本能に関与します。明確な意識ではなく、ぼんやりとした意識のレベルです。自律神経、内分泌、免疫系などを統合し、恒常性などの調整を行っています。たとえば、緊張すると心拍が速くなってドキドキしますが、意識的に行っているわけではありません。身体内部の状態を把握する生理システム: 内受容感覚 もこの大脳辺縁系が深く関与しています。
一番外側にあるのが、1番目の新皮質系で、人間らしい高度な機能を司る部位です。高次精神機能に関与し、意識に上るレベルです。この機能は人間で特に発達しており、意識に上る感覚の認識、言葉によるやりとり、意思による判断などを担っています。
心身相関と 脳 の機能的レベル
心身相関<心と身体の関係>を理解する上で、この3つのレベルを知ることが重要です。
いわゆる「心」=高次精神機能は1番目の新皮質系が担い、
「身体」に直結しているのは3番目の脳幹-脊髄系です。
その中間にある、ちょうどサンドイッチの具のようなところが2番目の大脳辺縁系で、心身相関において重要なレベルです。
たとえば、「何となく調子がよい」「体調が何となくすぐれない」といった感覚は、主に大脳辺縁系の機能であり、はっきりと言葉にできないレベルです。はっきりと意識できなくても、身体はちゃんと好不調などを感知し、適切な生理的調整を行ってくれています。
このような機能を担う大脳辺縁系は、
新皮質系=「心」と脳幹・脊髄系=「身体」
の「接点」にあり、心身相関<心と身体の関係>の生理的なかなめとなるのです。
(Kanbara K, Psychosomatic Labo/ LABs Psychosomatic Medicine, https://psychosom.net/brain-level, Jun 2021)