RESEARCH

ストレスプロファイル・バイオフィードバックで用いられる 精神生理学的指標

常に変化している、動的なからだの状態をとらえる手がかりとして、さまざまな 精神生理 学的な指標があります。心身医学的な評価・治療・研究では、ダイナミックに変化する状態の変化をとらえやすい指標として、以下のような 精神生理学的指標が用いられます。

これらの指標は身体的状態だけでなく、心理的・行動的状態によっても鋭敏に変化します(心身相関)。具体的には、心療内科におけるストレスプロファイルバイオフィードバックで用いられています。

心身医学での重要性

心身症や機能性身体疾患では、通常の医学的検査のみでは十分に病態が捉えられない場合があります。

例えば「機能性ディスペプシア(FD)」では、胃カメラでは異常が見つかりませんが、心窩部痛など胃運動の異常による症状のためにQOLが低下します。このような病態を捉える場合、胃の動きを胃透視などでみる方法もあります。もう一つは、その胃の動きをつかさどる自律神経の機能や心理的状態との関連を捉える評価があります。

精神生理学的指標は、そのような目に見えない機能的変化を、リアルタイムに「見える化」します。「見える化」「客観化」することで、機能的病態を捉えやすくなり、ストレスとの関連など心身相関の病態を捉え、その気づきから、心身医学的アプローチにつながります。

精神生理学的指標の一覧

精神生理学的指標 概要
1) 筋電図 (EMG)
<筋肉の緊張・弛緩をみる>
緊張が強いられる現代の生活では、持続的な筋緊張が関与する肩こり、頭痛、腰痛、慢性疼痛などが問題となっています。このような病態に関わる筋緊張やリラックスの度合いを捉えます。
2) スキンコンダクタンス (SCL)
<情動性発汗をみる>
発汗の中でも手掌発汗は中枢性で、情動の変化に対応しています。ウソ発見器はこれを用いたもので、心理的な動揺でも鋭敏に変化します。覚醒の度合い、精神的な動揺/安定性、緊張/弛緩などを捉えます。
3) 皮膚温 (TEMP)  
<皮膚の温度をみる>
末梢血管の収縮拡張などによって、皮膚温は常に変化しています。ストレスがかかると末梢の血管は収縮して循環が悪くなり、皮膚温は低下します。皮膚温はこのような状況に応じた末梢循環の変化を捉え、自律訓練法などのリラクセーションの指標としても重要です。
4) 容積脈波 (BVP)  
<末梢血管の収縮拡張をみる>
指尖容積脈波計(plethysmograph)によって、皮膚温とともに、末梢血管の変化をより直接的に捉えます。また、脈波から脈拍数が分かり、心電図をつけなくても心拍数を捉えることができます。
5) 呼吸 (RESP)  
<呼吸のパターン・深さ・速さをみる>
呼吸はさまざまな身体調整法の鍵となるものです。意識と無意識の接点でもあります。呼吸を捉えることで、心身のさまざまな状態を推定することができます。
6) 心電図 (EKG)  
<心臓の働きをみる>  
心臓はからだの活動とリズムの源です。身体的な状態はもちろん、心理的な状態によってもその機能は大きく変化します。 バイオフィードバックでは主に心拍数と心拍変動を捉えます。心拍数は生体リズムの源で、緊張すると「ドキドキする」と言われるように、自律神経系の緊張/弛緩の総合的な指標でもあります。
7) 心拍変動 (HRV)  
<自律神経の機能の指標>
心拍変動は自律神経機能を客観的に捉えたものとして、最も研究がなされている指標の一つです。心拍変動から、自律神経系の緊張の度合い、適応の柔軟性、交感神経・副交感神経のバランスなどを評価できます。

(Psychosomatic Labo, https://psychosom.net/research/parameter, July 2022)