高度に複雑化する現代社会では、パンデミック、高度情報化、気候変動、災害・紛争への不安、経済的不安など、私たちを取り巻くストレス要因は多様化しています。こうした背景のもと、ストレスが心身の健康に及ぼす影響を明らかにし、医療・心理臨床・産業保健などの領域で活用できる評価法を確立することが重要になっています。
ストレスに対して、人間の身体には変化に適応し回復しようとする働きがあります。このような動的な恒常性は「アロスタシス」と呼ばれます。したがって、ストレスと身体機能の関係を理解するには、単にストレス反応の強さを見るだけでなく、反応から回復に至るプロセスや、そのパターンを捉えることが重要です。
本研究では、ストレス関連疾患等における生理的ストレス反応と回復の特徴を、心理評価とあわせて多軸的に検討しています。さらに、得られた生理・心理データから臨床的に意味のあるストレス反応—回復パターンを抽出し、疾患理解やリスク予測に応用可能な心身医学的モデルの構築を目指しています。
また、施設内での評価に加えて、携帯端末やウェアラブルデバイスを用いた日常生活下での心身モニタリングにも取り組んでいます。日々の生活の中で得られる生理・心理データを活用することで、ストレス状態や回復力をより自然な文脈で評価し、セルフケアや早期介入につながる方法の確立を目指します。
これらの研究を通じて、ストレス社会における心身の歪みを捉え、人間が本来の健康を取り戻すための手がかりを、心身医学の視点から探っています。

